自動二輪飛び込み受験記録 後編


前回のあらすじ
クルマを持てない、持ちたくない私は小型二輪の飛び込み試験を受けていた。
しかし、一ヶ月ぶりに技能試験に挑むも課題走行2個目の一本橋で脱輪。独習の限界を悟った私は、時間教習の受けられる教習所を予約した。

スーパーDio AF-27
普段つかっている原付、スーパーDio

時間教習

申し込んだのは飛び込み専門アインカースクール
7月下旬の暑い日である。
妙に明るい、好青年な教官が指導してくれた。
まず、何を練習したいかを聞かれる。
「原付通勤で、4回受験したが、一本橋がなかなか規定タイムで通過できない」
「じゃ、2輪のバランスとかは(やらなくて)いいですね!早速、一本橋行ってみましょう」
バイクでついてくるのかと思ったら、教官は徒歩である。
自分から練習したいことを伝えて指導してもらうスタイル。車両はホンダのスペイシー?結構古い。エンジンが中々かからなくて、他の教官にかけてもらった。自動車だと試験車両と同じのが用意されているらしい。
直線狭路台、一本橋のコツを伝授してもらって、タイムを計りながら何回か練習。
いける(多分)
のちクランクを練習したいと伝えると、その前に定常円旋回をやることに。コーンの周りを円を描いてグルグル回る練習である。
教官「どんな2輪でもこれが基本ですから」
私「レーサーとか絶対練習してますよね」
教官「そうです、レースもジムカーナもやることは同じ、基本ですから!ハンドル、アクセル、ブレーキ、重心移動、全部入ってます。MTだとさらにクラッチも!」
ということでコーンをグルグル回る。やはり難しい。
二輪はトラクションをかけないと安定しない。ということで、アクセルを開けて後輪ブレーキで調整するテクが大事なのを体感。低速 の定常円に比べたら、S字もクランクも左折も楽勝だと。
右旋回はそれなりに出来たのだが、何故か左旋回が上手く出来ない、しょっちゅう足をついてしまう。エンジン配置で左右の旋回に差が出るようなものでもなし、自分の身のこなしだろうとは思う。
で、クランク。クランクが出来ればS字はやらなくてもいい、S字の難しい版がクランクだからとのこと。
通常のブレーキングもトラクションのかかる前輪ブレーキを上手く使う、ブレーキ力の配分は前8:後2ぐらいが理想とのこと。確かに前輪ブレーキを意識して強く使うようにしてから、より思い通りにスクーターが動かせるようになった。
実はニーグリップ(バイクだとタンクを足で挟んで車体を保持できる)ができないので、ATスクーターの方がバランスが難しいとのこと。
教習が終わって「まだまだ中型MT、大型もありますよ!頑張りましょう!」とのことであった。
うーん、MTは憧れるけど、クラッチ操作しながら車体を操れそうにないなあ。
アインカースクール、あまり広くない場内に二輪から大型特殊までの各種技能コースが混在しているのでなかなかカオスである。ため池の横で、待合や倉庫がプレハブだったのでなんだか海の家みたいだ。トイレが屋外設置の仮設タイプだが綺麗なものが置かれていた。
他にもバイクショップがYoutubeにアップしている「二宮祥平ホワイトベース」の教習で役立てて欲しい動画

とか、
バイク初心者サポートラボ」を読んだりして勉強。
原付に乗り始めた頃に買った「アインカースクール 技能試験 虎の巻」は既に結構ボロボロである。

再び技能試験

8月1日 5回目

75コース 3号車
1本橋を規定タイムで通過。6.1秒で試験官からも「上々」とのことであった。
やっと自信を取り戻してきた。
しかし、確認時のふらつきと左折大回りにより減点超過。
発進時にアクセルをしっかり開けることを意識した結果、やたらハイペースになってしまった。速度計もほとんど見ていない。よく言えば「元気よく走った」

8月15日 6回目

76コース 1号車 曇
最後の信号に差し掛かったところで、黄色になったので急停止。横断歩道の上で停止してしまい減点20。
「あー、これは黄色でも通過してしまってよかったタイミングだなー」と思っていたら、やはりその通り。それでも急制動まで持ち点があった。試験官曰く「もったいない!」とのこと。
「あそこで青のままだったらなー」と思うが、信号が黄色になっても行くべきか、制動かけて止まるべきかの判断も技能のうちである。自動車の教習の時は、路上教習で判断遅れで行けるタイミングを逃しているのはよく言われた。今でも右左折では安全マージンが沢山ないとスタートできない質である。
余談だが、自動車の路上教習中に救急車が近づいてきたことがある。「検定試験中に緊急車両に出会ったら、その対応も含めて採点される」と言われ「そんなー」と思ったが、免許取得10年を経ると「そりゃ全部採点せにゃならんだろ」と思うのであった。しかし、あの教習所(アインカースクールではない、近所の認定教習所)、救急外来のある病院の前を通るコースは止めた方がいいぞ、絶対救急車がくるじゃないか。
明石の小型ATの試験車はスズキ・アドレス、今回の3号車がエンジンレスポンスがいいようだ(2017年8月時点)。1号車は若干、くたびれた車両である。小型MTはヤマハYBR125かな? 大型の試験車がカワサキという噂をネットで目にしたが、ヤマハであった。

8月22日 7回目

76コース 1号車 晴
再び、一本橋で脱輪。
視線が下がってしまったか、アクセルの開度不足でトラクションが不足していたか、両方か、ズレ始めてから立て直す間もなく前輪を落とす。この日はS字・クランクをやってから発着点へ戻るよう指示が出た。
「綺麗に乗れている」とは言われたが…睡眠不足の日は一本橋で落ちやすいようだ。いまいち走りにもメリハリがなかった。二輪はメンタルが走りに影響しやすいと思う。
というか、メンタルかなり重要。人間がバランスとって走らせていくわけで、課題走行は特にメンタルの影響が出やすい。ちょっとしたことでも落とす、特に一本橋。普段乗っているスーパーDioがこの時期1ヶ月ほど特に調子がよくなく、アクセルが開かずに加速できないことが増えてきていた。アクセルをかなり慎重に開けて走らざるを得なかった。その影響もあってか、試験時もアクセルを開けることに不安感を持っていたのだと思う。
週末にスーパーDioを簡単に再整備。アクセルがほぼ完全に復活した。
また、姿勢と目線を意識して原付を走らせて練習した。

9月5日 8回目

75コース 1号車 雨降りそうな曇
ならし走行でしっかりアクセル開度とブレーキを確認。規定速度40km/hでの走行が単区間で1回あるのだが、もう同じ直線を走るときは課題走行時でなくても40kmを出すつもりでアクセルONで走る。
そして呪詛のごとく「目線は前、目線は前、目線は前……」と唱えながら走る。
完走。
しかし、まだ分からない。最後の課題、急制動で減点超過の際は「減点超過です」との無線が入らない。もう発着点に帰るだけだから。持ち点があれば、2回目のチャレンジが出来るので、その時は無線が入る。また、停車措置も正しくなければマイナス5点。
試験官が降りてきて講評。小型ATの受験者は3人いるが、私は飛ばされる。合格っぽい!
最後にあっさりと「アキヤさん、一応合格予定です。説明がありますので、ここで待ってください。」

技能試験 合格

合格予定!
長かった…。6回目の「もったいない」は実はこの試験官である。他の試験官はほぼ一回限りだった。
合格時の事故事例説明は別の人だった、曰く「初心を忘れずに、安全運転をお願いします」
そして窓口で「合格確認書」を受け取るときに「おめでとうございます」と言われる。
うーん、警察から「おめでとう」なんて言われることは、まあそうそうないよね。結構嬉しい。
試験場での飛び込み技能試験というのは独特の難しさがある。道路交通法に従った運転、法規走行ができているか、安全に走らせるために十分な程度に車体をコントロールできるか、という点をみている。そして、試験車に乗る機会が試験以外にないこと。
試験場でいきなり実車を運転して、課題走行と法規走行をやらねばならない。教習所だと教習車で試験なので、車両に馴れることができる。
運はほんの少しあります。受験日の天候とか、場内信号のタイミングとか、同時に走ってる試験車同士の位置とか。それでも難易度が若干変わる程度のものです、きちんと勉強と練習をして走れば通ります。

取得時講習

初めての2輪免許になるため、交付(書き換え)前に講習を受けなくてはいけない。3時間。
合格確認書に、実施している教習所の表があるので、自分で電話して予約して受けてね、あと技能試験合格の有効期間1年なので早めにね。とのことであった。
最寄りの教習所は実施していないが、クルマで40分ぐらいのところで2カ所あった。
一カ所目は予約が取れなかったが、二カ所目で2週間後に予約をすることが出来た。
3時間も乗るのかーと思いつつ、教習所へ。
教習所は自動車免許以来なので、実に10何年ぶりである。若い人ばかりだ、そりゃそうだよね。
受付で取得時講習に来たことを申し出て、受付、受講料支払い。するとテキストがもらえる。それによると講習の内訳は…

  1. シミュレータによる危険予測 1時間
  2. 座学、危険予測・二人乗りの方法 1時間
  3. 実技 1時間

で、計3時間。
なんでも私を含めて3名の受講予定だったが、一人は免許を忘れて受講できず、一人は予約時間に表れず音信不通とのこと。
ということで気さくな指導員さんによるマンツーマンでの講習となった。
君ら、免許欲しくないんか?
危険予測シミュレータは昔あったセガの「ハングオン」みたいな代物だった。ホンダ製っぽい。制御がWindows2000のPCだった。一番難しい難易度のコースをやったが、公道は何があるか分からないね、ホント。
教習所と同じ時間割のため、50分学科・10分休憩で1セット。
2時間目は危険予知講習と二人乗りの際の注意についてDVDでの講習など。
時間が余ってしまう。限定解除をするなら、小型でAT限定解除か、普通自動二輪で小型とMT同時に限定解除どちらがよいか、を聞いたりした。小型MTにするメリットはあまりないし、教習時間も短いので普通二輪がよいとのことだった。
3時間目はいよいよ実車での走行。
曰く「取得時講習は、受講者のスキルが分からないので講習をする側も不安ではある」とのことだった。教習生なら、自分が担当でなくても他の指導員に聞いたりして分かるが、取得時講習はいきなり走ってもらうため、全く分からないそうだ。
うーむ、自分も久々の125ccで不安があるぞ。
原付通勤している旨、話していたので技能は問題ないでしょうとのこと。30分ぐらい、指導員の後ろを走った。
スズキ・アドレスの最初期モデルで結構クセがあるとかで、恐る恐る乗ったが、馴れてきたらそうでもなかった。ただし、センターが狂っているらしく、右にハンドルが取られやすい。また、低速でガクガクすることがあり、遠心クラッチがよくないのだろうとのこと。教習車は基本的にはボロいんだそう。乗り方を覚えるために乗るので、よく転けるエンストさせる等々の理由。
その上で、疑問点があればということで、いくつかアドバイスをもらった。

交付

再度、明石試験場にて免許の交付を受ける。
9時に受付で10時半ぐらいに交付してもらえました。原付免許の人も同じ手順みたい、講習後に証明書を持って交付。
合格してから試験場預かりになっていた受験登録票と一瞬だけ再会できます。○に合で合格の印が押されてました。
免許証に「普通二輪」の文字が!
ここまで4ヶ月、長かったです。

収支

  • 技能試験 \4,500 8回
  • 明石試験場までの交通費 8回
  • 時間教習 \8,500 1回
  • 取得時講習 \12,000

計 \70,740
普通に教習所で、一発で卒検通過するのと同じぐらいかかってしまった。
でもまあ、補習を受けることになって、追加料金払いまくるよりか安い。何より、試験以外は自分のペースで練習できる。

その他いろいろ

  • 試験場へ通うのが案外、しんどい。
  • 女性ライダーはかっこいい。
  • 大型二輪は絵になる
  • 自分と同年齢の30代~40代はあまりいない。多分、平日の試験は受けにくいので教習所で取っているんじゃなかろうか。20代半ばまでと、40後半以降の男性が多い印象。
  • 小型二輪は「格好悪い」走りの人が多い。原付の延長で気軽にやってきて撃沈なのでは。乗車姿勢も採点されているので、両脚をつかないとか、採点内容と法規走行をしっかり対策すると、スマートな感じになると思う。右足接地は減点、踏ん張ると転倒とみなされて試験終了とのこと(教習所の指導員から聞いた、試験官も試験後のアドバイスで言っていたかも)
  • 普通二輪・大型二輪は低速のクラッチワーク、アクセルワークに苦戦する人が多いみたい。特に大型はエンジンが大馬力。軽四より排気量が大きい。
  • 明石試験場は狭い。ストレートが50mないので、忙しい。
  • 「綺麗に乗れてます」と言われて、不合格でも嬉しかった。
  • 試験官は親切。ただし、アドバイスの細かさは試験官によって結構違う。練習方法まで教えてくれる場合もあれば、割とあっさり終わることもある。
  • 試験後のワンポイントアドバイス時は「あそこはこうだった」とか言いたくなるが、しっかりアドバイスを聞くべき。3人ぐらいまとめてアドバイスをすることもあり、あまり時間が取れない。ただし、疑問点があれば教えてくれる(かも)。
  • 巻き込み確認はあまり神経質にならなくてよい、なぜなら二輪は巻き込まれる側だから!(取得時講習の指導員より)

次は…MT?マニュアルの練習は、まずバイクを手に入れるところからになるので、その時は教習所にしよう。

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