小学校の高学年の頃、毎年のように祭りの夜店で金魚すくいをしては、飼っていた。
急に死んでしまったり、野良猫にやられたりして半年も持ったことはなかったと思う。
ある年、一匹の金魚が弱ってきて金魚の体に藻のようなものが付いていた。
金魚鉢から別のバケツに移して様子を見ていたが、どうも病気らしい。
夕方ぐらいに父が近所のホームセンターに「薬を買ってくる」と弟と出かけていった。
しかし、全然帰ってこない。
その間にも金魚はますます弱っていった。
自分は金魚のバケツの側でずっと待っていた。
日も傾いてくる、一体何故こんなに時間がかかっているのか。
もしかしたら、近所のホームセンターに適当な薬がなくて探し回っているのか。
完全に日が落ちてから、父は帰ってきた。
買ってきた薬のパッケージには、バケツの中の金魚と同じような金魚の写真が印刷されていた。
まさにこの薬が必要だった。
しかし、遅すぎたのだろう、バケツに薬を入れてしばらくして金魚は動かなくなった。
金魚は死んでしまった。
目の前で生き物が死んでいく様をずっと見ていたのは、あの時だけだったのではないかと思う。
薬を買って帰ってくるのが遅くなった理由は、結局聞いていない。
最近はこんなことがあったのも忘れていた。
この連日の猛暑のような、ある暑い日の夕方から夜にかけてのことだった。